税効果会計が導入されるきっかけ

これまでは、法人税額の計算と会計計算との食い違いにより、その決算書に不整合な部分があったわけですが、その不整合な部分をそのまま放置できなくなってきました。それは、税金も他の費用と同じように、収益に対応して期間配分をすべきだという理由の他に、主に銀行をはじめとした企業が税務上損金として算入できない多額の不良債権の償却を迫られたことが大きな理由となっているようです。

 

たとえば、ある企業において、その期の経常利益が100だったとして、その企業が不良債権の償却をしたために、特別損失が100計上されたとします。そして、この特別損失は企業側の会計上は費用として計算されますが、税務上は損金として算入できないものだとします。そうなると、会計的には費用ですので、税金が引かれる前のその期の利益は差し引き0ということになります。

 

一方、税務上の所得は特別損失100が損金には算入されませんから、その期の所得は100となります。そして、法人税等は所得の40%となりますので、100×40%=40になるわけです。その結果、その企業のその期の純利益は40の欠損となってしまうわけなのです。

 

つまり、不良債権の償却を行ったために、会計上の利益は減少しているのにもかかわらず、税金は減少しないことになります。これでは企業側も積極的に不良債権の償却をしようという気が起こらなくなるわけです。しかしながら、いつまでも不良債権を抱えているわけにもいかないでしょう。そこで、税効果会計が導入されることになるのです。