決算書の不整合さ
決算書は株主などの利害関係者にその企業の経営成績を開示するものです。その決算書による企業の経営成績を見ることで、株主は自身の配当を決定し、債権者の場合はこの企業との取引を検討することになるのです。そして、この決算書は法人税額を計算する時の基礎を提供するという役割も担っています。
法人税額はその年の会社の利益に法人税率をかけて算出されます。ただ、このとき計算される税務上の所得というものは、必ずしも会計上の利益とは一致しないわけです。その結果として、会計上の利益と法人税額との間に不整合性が生まれてしまいます。税効果会計は、この両者の整合性をとるために導入されたのです。
企業側は、売上高から税引前利益まで会計的に計算することになります。しかし、法人税等は税務計算によってその所得を算出しています。そして、この算出された所得に基づいて計算された法人税額が再び決算書に戻り、法人税等として計上されることになります。
ところが、法人税額の計算は会計計算とは違う方法によって行なわれているために、税引前利益や法人税等、当期純利益などの関係が企業側が思っていたものとは違ってくることになるわけです。その結果、法人税等が多すぎたり、少なすぎたりするケースが生まれ、その期の純利益も不整合なものになってしまうわけです。
しかし、税効果会計が導入される前までは、こうした不整合さは致し方ないものとして考えられており、その決算書も不整合なまま表示していたわけなのです。